どうも、かたゆでです。今回はようやくギターネタです。
主役はこいつら。

7弦:Strandberg Boden Classic7
6弦:HEX guitars N500P
RASのコピーで使用する2本のヘッドレスで、曲に合わせてこの2本を持ち替えています。
ギターについては以前の記事で詳しく紹介しています。

今回は「この2本をできるだけ同じ条件、同じ音で使いたい」という話です。
現状の仕様と課題
ギターを使い分けるならそれぞれに合わせて専用のパッチを作るのが世の常ですが、ギターを持ち替えるたびにパッチを切り替えて、必要なら他の設定も変えて……と操作が増えていけば、めんどくそれだけ本番中に間違えるリスクも増えてしまいます。これはよくないですね。
できることなら、ギターだけ持ち替えて終わりにしたい。
というわけで、この2本のギターはリアピックアップを同じものに統一しています。
PUはどちらもSeymour Duncan Nazgûl。
もちろんまったく同じ音になるとは思っていませんが、ピックアップが同じならそこまで大きな違いは出ないだろう。……と思っていました。
でもなんか違うんですよね。とりあえず百見は一聴に如かずということで実際の音がこちら。
フレーズは例の曲から拝借しました。特に気になったのが低音弦を弾いたとき。
Strandbergの方が比較的タイトにまとまって聞こえるのに対して、HEXは低域が少し散らばるような、伸ばした音がまとまりにくいような感じがします。
ただ、現時点ではあくまで弾いていて感じた印象止まりです。そんな気がする。そうかな、どうかな。
今回の検証
というわけで今回は、本当に2本の音にそれだけの差があるのかを徹底的に調べてみようと思います。
でも私の耳でそんな詳細な聞き分けは不可能ですし、そもそもエフェクターの音つくりも8割くらいはフィーリングです。何が変わるのか説明できないツマミの方が多いくらいです。
そんな私が徹底的にどうやって調べるねんという話です。ということで今回もみんなで助けを呼びましょう。せーのっ
「助けてチャッピー!!!」
からのドンっ

ということで、2本のギターを比較するための解析ツールを作ってもらいました。
このツールでは、音量、周波数バランスやアタック、音の残り方、減衰の仕方などをまとめて比較できます。
果たして同じNazgûlを載せた2本は、本当に違う音が出ているのでしょうか。
検証していきましょう。
作業分担は下記のとおりです。
チャッピー:ツール作成、ツール修正、ツール修正のためのプロンプト作成、結果の解釈、次の測定の指示、質問への回答、etc.
わたし:録音、音源書き出し、音源の貼り付け、結果の貼り付け、わからないことの質問
素晴らしい連係プレイですね。反逆しないでね。
まずは「素の音」を比べてみる
まずはお試しとしてエフェクト処理される前の素の音であるDRY音を比較してみます。
演奏のばらつきを考慮し、今回は同じフレーズを3回ずつ録音(N=3)し、3テイクで同じような傾向が見られるかを確認します。実際に録音したフレーズが以下です。
細かい話は後にして、とりあえず比較結果を見てみましょう。

グラフは「Target:(HEX)− Reference(Strandberg)」の差で、0に近いほど今回測定した指標が近い結果となります。……結構違いますね。
解析項目は大きく音の大きさ(Level)、Spectrum(周波数バランス)、Residual(残留成分)、Decay(減衰)の4つに分かれています。それぞれの詳細を順番に見ていきます。
音の大きさ ― Level
まず一番分かりやすいのが音の大きさです。
ここではRMS、Peak、Crest Factorの3つを確認しています。
まずRMSは、ざっくり言えばフレーズ全体としてどのくらいの大きさがあるかを見るための値です。
今回の結果では、HEXのRMSはStrandbergより約7.7 dB低いという結果になりました。
それに対しPeakは、瞬間的な最大値を示します。
こちらもHEXの方が低いのですが、その差は約2.6 dB。RMSの約7.7 dB差と比べると、かなり小さくなっています。
つまりHEXは、「フレーズ全体としてはStrandbergよりかなり小さいけれど、弾いた瞬間のピークはそこまで小さくない」ということになります。
そして、この関係を見るのがCrest Factorです。
Crest Factorは簡単に言えばPeakとRMSの差で、値が大きいほど平均的な音量に対して瞬間的なピークが飛び出していることを表します。
今回、HEXはStrandbergよりCrest Factorが約4.8 dB大きいという結果になりました。
RMSだけを見ると「HEXの出力が単純に小さいだけ」にも見えますが、もし本当に同じような信号がそのまま小さくなっただけなら、PeakもRMSも同程度に下がり、Crest Factorはそれほど変わらないはずです。
ところが実際には、PeakとRMSの下がり方に差がみられるため、2本の違いは、単純な出力レベルだけではなく、弾いた瞬間とその後の音の出方にもありそうだ、と解釈できます。
周波数バランス ― Spectrum
次は周波数バランス(Spectrum)です。
これは周波数帯ごとのlevelを見ています。
今回の結果では、特に150~300 Hz付近で差が大きく、HEXの方が約8.3 dB低い結果になりました。
300~600 Hzでも約5.0 dB低くなっています。
先ほどRMS自体に約7.7 dBの差があったので、これだけで「HEXは低域がない」と断定することはできませんが、少なくとも2本の違いは全体の音量だけではなく、帯域によっても同じではないことが分かります。
残留成分 ― Residual
次がResidual(残留成分)です。
今回のフレーズは低音弦のブリッジミュートを繰り返すことで、弾いた瞬間だけでなく次の音を弾くまでの隙間にどれくらい音が残っているかも比較しています。
ツールでは全体を見るInter-note Residualと、低域に絞ったLow-band Residualを確認しています。
ここにも2本の差が見られました。HEXのほうが低い傾向があり、単純に見るなら音切れが良いということになります。ただしResidualは元の信号レベルにも影響されるのでまだ言い切ることはできません。
現段階では、音と音の間に残っている信号量にも違いがあるくらいに見ておきます。
減衰 ― Decay
最後にDecay(減衰)です。
これは音を弾いた瞬間を基準にして、その後100 ms、150 ms、200 ms、300 msと時間が経ったとき、低域がどのくらい残っているかを見ています。
最初に感じていた、HEXは低域が少し散らばるような、伸ばした音がまとまりにくいような感じがしますという耳で聴いた際の印象から、今回の解析項目として取り入れました。
ところがDRYの結果を見ると、100 msと150 msでは2本の差はほとんどありません。
差が出始めるのはもう少し後で、200 msではHEX側が約+1.3 dB、300 msでは約+2.1 dB。
つまり、少なくともこのDRY音だけを見る限り、HEXだけ低域がいつまでも残っているのが原因だと説明できるほど単純ではなさそうです。
DRY音比較結果
ここまでをまとめると、エフェクトを一切通していない段階ですでに、2本にはいくつか違いがありました。
特に目立つのは全体の信号レベルと周波数バランスです。
一方、最初に怪しいと思っていた「低域の減衰」については、DRYの100~150 msではほとんど差がなく、後半に少し差が見える程度でした。
ただし普段弾いているのは、当然ながらGT-1000COREでガッツリ歪ませた音であり、DRY音はあくまでも参考です。
とういことで、次は普段使っているパッチを通した音を比較してみます。
エフェクターを通した音を比べてみる
それではいよいよ普段使っているRAS用パッチを通したWET音を比較してみます。
ここからの比較では、設定を変えるたびにギターを弾き直すことはしません。
先ほど録音したDRY音をGT-1000COREへ戻してエフェクト処理し、その出力を再び録音するリアンプという方法を使います。
元の演奏が同じなので録音時のばらつきは無く、エフェクトを通すことで2本の差がどう変化するかを純粋に見ることができます。
比較結果
WET音での比較結果を以下に示します。音源は記事冒頭のものを使用しています。

先ほどのDRYと同じく、グラフは「HEX − Strandberg」です。0に近いほど、2本の値が近いことを表します。
この時点で、DRYの時とは全く異なる傾向が見られますね。それでは詳細を見ていきましょう。
Level
まずはLevelから。
- RMS:-7.66 dB→ -1.21 dB
- Peak:-2.58 dB→ -0.86 dB
- Crest Factor:+4.76 dB→ +0.19 dB
すべての項目で差が縮まっています。
歪みなどの処理を通したことで、もともとあったレベルやダイナミクスの差がかなり圧縮されたようです。
Spectrum
続いてSpectrumです。
代表的な帯域を抜き出すと、
- 20~80 Hz:-11.38 dB → -1.32 dB
- 80~150 Hz:-8.15 dB → -2.26 dB
- 150~300 Hz:-8.31 dB → -1.99 dB
- 300~600 Hz:-5.04 dB → -1.42 dB
- 600~1200 Hz:-4.60 dB → +0.23 dB
- 1.2~2.5 kHz:-5.25 dB → +0.12 dB
- 2.5~5 kHz:-5.59 dB → -0.29 dB
- 5~10 kHz:-4.47 dB → -0.63 dB
こちらも、いずれの周波数帯でも差は縮まっています。周波数バランスについても2本の差はかなり吸収されたようです。
Residual
Residualも同じように比較します。
- Inter-note Residual:-11.46 dB → -0.26 dB
- Low-band Residual:-11.80 dB → -3.04 dB
こちらも大幅に差が縮まりました。
特にInter-note Residualはほぼ0です。
Low-band Residualには約3 dBの差が残っていますが、DRYでは約12 dBも離れていたことを考えるとかなり近づいています。
Decay
最後にDecayです。
- 100 ms:+0.13 dB → -1.07 dB
- 150 ms:+0.07 dB → +2.99 dB
- 200 ms:+1.34 dB → +4.01 dB
- 300 ms:+2.09 dB → +7.86 dB
こいつだけ様子がおかしいですね。
他の3項目ではいずれも差は縮まる傾向だったのに対し、Decayだけは150 ms以降で逆に差が大きくなっています。
しかもHEX側がプラスなので、アタックから時間が経った後の低域が、Strandbergに対して相対的に多く残る方向です。
最初に耳で感じていた、「HEXの方が低域が散らばる」「伸ばした音がまとまりにくい」という感覚とも、少し話がつながってきました。
ただし後半のDecayはテイク間のばらつきも大きく、300 msは参考値として見る必要があります。
とはいえ、DRYでは小さかった差が、エフェクトを通した後に大きくなったという変化そのものは気になります。
検証結果
ここまでで、最初の「なんか違う」が少しだけ見えてきて、低域のDecayが悪さをしているのではないかと仮説が立ちました。
となると次に気になるのは、エフェクターのどこで、この差が広がっているのか?
……ですが、長くなってきたので今回はここまでとします。
次回は同じDRY音をリアンプしながら、ブースター、アンプ、コンプレッサー、ディレイなどを一つずつ疑って、Decayの差がどこで生まれているのかを探してみます。
果たして犯人は見つかるのでしょうか。
乞うご期待

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